国民年金と厚生年金

わが輩は還暦である。名前はあるが、仕事はない。

1月末で1年2カ月働いた職場を辞した。

59歳で久しぶりの正社員の職を得て、1時間弱の電車通勤も読書タイムを満喫した。

が、しかし、体か頭が動かなくなるまで働くつもりだった職場にはついに馴染むことが叶わず、再就職めざして東奔西走する日々を選んだというわけである。

 

40歳のときに、以前勤めていた職場を退職し、これはと思った企業の求人に応募したものの、20通弱の「このたびは、貴意に添えず、まことに申し訳ありません」で始まる書き出しの不採用通知を受け取った若き日のことが甦ってきた。当時ですら再就職は難しい年齢だといわれていたことを鑑みると、このたびは、さらに難しいことは目に見えている。それでも、年金を受け取れるまでは5年弱を働いて過ごさなくてはならない。それでも年金だけで生活することは困難であることは明白である。

 

本日、厚生年金から国民年金への手続きに市役所の出張所に伺って、話を聞いているうちに、あなたはすでに還暦を迎えているので、もう年金を払わなくもいいと言われ、びっくりした。「そうなんだ。やっぱり本当に還暦になったら年金を払わなくもいいんだ」と改めて納得した。

 

厚生年金の場合は、70歳まで払うことが義務づけられているが、国民年金は60歳までだとのこと。還暦を過ぎても厚生年金を払い続けていたので、年金は払うものとばかりに思っていたが、「そういうことだったんだ、なるほどね」と自分自身に問いかけながら、親切にいろいろと教えてくれる係員の話に耳を傾ける。

 

「それじゃぁ、どうしましょうか? 職場を辞めても2年間は、そのまま厚生年金を払い続けることができる制度があって、人によっては、国民年金に移行せずにそのまま厚生年金を払うことを選択する方もいらっしゃいます。ただ、これまでは会社が半額を負担してくれたわけですから、払う額は倍になりますね」

 

そうか。倍の額を払っても厚生年金のほうが、あとあと有利になるんであれば、それもいいけど、そうでないなら国民年金にすぐさま変えるというのでもいいではないかと逡巡していたら、係員は、すぐさま次の説明を続けてくれる。と、同時に年金事務所に連絡を取って、自分のこれまでの支払額を問い合わせ、その返答を受け、次々に新たな提案してくれる。

 

結果、いったんは、国民年金に移行することにして、年金事務所に電話を入れ、3日後のアポが取れた。ここでさらに詳しく話をきいてみて、これまで免除になっていた年金をいつまで払うべきかを相談することにした。くだんの係員曰く「国の法律もコロコロ変わることですし、いつ亡くなるかもね。先のことは誰にもわかりません」

 

還暦リボーンの旅は、始まったばかりだ。